大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

宮崎地方裁判所 昭和33年(わ)463号 判決

被告人 少年B(昭一四・五・二九生)

主文

本件公訴を棄却する。

理由

本件公訴事実の要旨は、被告人は、昭和三十三年十月九日、宮崎市大字恒久城ヶ崎八重川橋北方約五十米の地点において、Aを強姦し、その結果同女に対し治療約一週間を要する処女膜裂傷を負わせたものである。というにあるが、本件起訴状によれば被告人は、昭和十三年二月十日生となつているところ、宮崎市長作成の外国人住民登録に関する照会回答書によると被告人の生年月日は西暦一九三八年(昭和十三年)二月十日となつていて右起訴状と一致することが認められる。しかしながら右回答書は、証人矢野伝吉の当公廷における供述(第一、二回)によると、その基礎となつている昭和二十三年当時の外国人登録申請が、部落その他の集団毎にその代表者や世帯主等において一括してなされたもので、その申請の手続は単に届出書を提出すればよく、且つその際その届出書記載事項の真実性を証明する何等の資料をも要しなかつたものであることが認められ、しかも同供述によつて認められる被告人の父母が無学であつた事情と併せ考えるとき右申請の際提出した届出書の記載内容従つてそれを基礎とする右照会回答書は必ずしも信用できないのである。却つて昭和十五年二月七日付、同十八年四月二十四日付戸籍抄本(二通)、宮崎市立○○小学校長作成の証明書、同市立○○中学校長作成の卒業証明書によると、被告人の生年月日は、いずれも昭和十四年五月二十九日となつており、これと被告人および証人C、同Dの当公廷における各供述とを総合すると、被告人が昭和十四年五月二十九日出生したものであることを確認することができる。そうすると被告人は本件公訴提起のあつた昭和三十三年十月十八日当時は少年であつたこととなる。しかるに本件起訴は家庭裁判所を経由した事跡がないから公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるときに該当するので、刑事訴訟法第三三八条第四号に則り主文のとおり判決する。

(裁判官 福山次郎 野口昇 重田九十九)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例